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札幌地方裁判所 昭和50年(ワ)1067号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

一被告らが原告よりそれぞれ本件各土地を賃借してきていること、昭和四二年一〇月、右賃貸借契約は、期間を二〇年賃料を別紙第一表(三)欄記載のとおりとする旨改訂されたこと、その後、昭和五〇年四月、原告は被告らに対し、同年五月一日以降、同表(四)欄記載のとおりそれぞれ賃料を増額する旨の意思を表示し、右意思表示はその頃いずれも被告らに到達したこと、はいずれも当事者間に争いがない。

二そこで、本件各土地の適正賃料について判断する。

(一) <証拠>を総合すると、次の事実が認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

すなわち、被告らは、本件各土地を大正年代もしくは昭和の初め頃より訴外五十嵐から賃借し同地上にそれぞれ居宅を所有してきたこと、しかし昭和二二年秋頃、訴外五十嵐が納税上の理由で右各土地を売渡すことになり、地区民生委員が仲介して賃借人たる被告らがこれを買受けることになり、被告らの相当数までは売買価格等の条件もほぼ合意に達する状態に至つたこと、然るに同年一二月、突如、原告が右各土地を訴外五十嵐から買受け同月二四日所有権移転登記も経由したこと、これを知つた被告らは、全員で原告の所に赴き、当時の林校長と宮本理事長は激しく抗議し、右売買契約の解約もしくは、右各土地を被告らに譲渡すべき旨を強く求めたこと、これに対し、原告側は、被告らに対し、当時裁縫学校であつた原告が新制度の高等学校として認可を得るにつき学校法人として所定の面積の敷地をその所有資産として具備すべき必要があり、そのために原告としてはどうしても必要な土地であるが、現実にこれを使用する意思も収益目的もないので、被告らに土地明渡を求めたり、利得を目的とした賃料の改訂、転売等はしないから教育のために協力して欲しい旨の説明を行い、被告らも結局これを了承して右紛争はおさまつたこと、そのため、本件各土地の賃料は、昭和二四年に円の改訂に伴い二〇倍になり、更に昭和二五年九月固定資産税をまかなうため三倍になつたが、以後昭和四二年まで一七年間据え置かれたこと、昭和四二年に賃料を改訂したのは、当時の賃料が固定資産税、都市計画税の税額(以下、租税額という。)を下まわるほどの結果となつたためであり、したがつて、右改訂賃料額の算定は、本件各土地の租税額の総額に若干の諸経費を合算したものを被告らで適宜分配するという方法で定めることにし、結局、具体的には、被告らを、坪単価一八円、二八円、三八円の各三段階に分けてそれぞれその賃料を算定したこと、然るに、この度の原告の増額請求は、原告側の担当者が代わつたこともあつて、従前の経過を全く無視してなされたものであること、以上の諸事実が認められる。

(二)  右に認定の、原告と被告ら間の特殊事情とその経過に鑑みると、本件において、借地法第一二条二項にいう「増額を正当とする」か否かの判断の前提となる「適正賃料額」は、いわゆるスライド方式、すなわち、既定の賃料を標準とし、これにその後における経済変動(地価の上昇、公租公課の増徴、物価の騰貴)による修正率を乗ずることによつて算定するのが相当であるというべきであり、したがつて、いわゆる積算式評価法(目的土地の価格に期待利回りを乗じ、これに公租公課、管理費用等の必要経費を加算して賃料を求める方法)に原則的に依拠していると思われる甲第一号証の鑑定評価書、同第三号証の一、二の鑑定書記載の各鑑定評価額は、そのままこれを参考にするわけにはいかない。

そして、前認定の原告と被告ら間の特殊事情と従前の経過に鑑みると、本件において、既定の賃料をどの程度スライドさせるべきかの判断に当つては、本件各土地の租税額の現況とその増加率を主として参考にしてこれを決定するのが相当であるというべきである。

(三) 本件各土地の昭和四二年度、同五〇年度、同五一年度における固定資産評価額、固定資産税額、都市計画税額およびこれらの昭和四二年度を一とした場合の上昇率が別紙第二表のとおりであることは当事者間に争いがない。

そこで、右の事実を前提に本件各土地の適正賃料額につき按ずると、当裁判所は、甲第三号証の一、二の鑑定書記載の各鑑定評価額のそれぞれ七〇パーセントに相当する別紙第一表(五)「適正賃料」欄記載の各金額が適正な賃料というべきものであると思料する。ちなみに、右各算出額は、昭和五一年度の租税額の概ね二倍に相当し、また、従前の賃料の概ね四ないし五倍に相当する金額である。

(増山宏)

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